「エアコンを使用しても部屋が思ったように冷えない」、「ときどき動作が停止してしまう」といった不具合の原因の1つとして考えられるのが、冷媒ガスの不足や漏れです。

この記事ではガス補充のタイミングや、自分でガス補充をする手順・注意点などを解説します。

冷媒ガスの補充タイミング

冷媒ガスが少なくなると、うまく冷気や熱気を循環することができなくなり機能が低下します。

エアコンの冷媒ガスは7~8年程度で交換するのが一般的で、家庭用エアコンで冷媒ガスの補充が必要になる場面はあまりありません。

ただし、設置・取り外しによるガス漏れや配管の劣化などが発生すると冷媒ガスの補充が必要となる場合もあります。

続いて、冷媒ガスの補充が必要な場合を紹介します。

①取付工事で不備があったエアコン

まず考えられる原因は、取付工事で不備があるケースです。

エアコンの室外機は基本的に自分で取り付けることができず、業者やメーカーが代理で設置作業を行います。冷媒ガスは発火しやすく、作業には専門知識が必要になるためです。

しかし、業者が作業してもまれになんらかの不備によって冷媒ガスが漏れてしまったり、漏れるような配管の取付が行われてしまうこともあります。

冷媒ガスが抜けるとエアコンからエラーが出るなどして、動作が止まります。

この場合、冷媒ガスの補充が必要です。ただし、配管からの漏れがある場合は冷媒ガスを補充してもまた抜けてしまうため、修理工事も必要です。

②配管が損傷してしまったエアコン


エアコンには冷媒ガスを循環させるための配管が2つ設置されており、1つはエアコン本体から室外機に送るもの、もう1つは室外機からエアコン本体に送るものです。

このどちらか、あるいは両方が損傷してしまった場合、冷媒ガスが漏れてしまいます。

漏れの量によって緊急性は変わりますが、十分な冷媒ガスが確保できなくなるとエアコンの機能が低下します。

損傷原因は業者の作業以外に、自身で室外機を移動させた場合なども考えられます。

③取り外しの際に冷媒ガスが漏れてしまったエアコン

エアコンの設置場所変更や室外機の掃除で取り外す際に、冷媒ガスが漏れてしまうことがあります。

例えば、配管や接続パーツが外れる、キャップが緩むといったケースが考えられます。

④取り付けてから長く経過しているエアコン

エアコンの平均寿命は10年と言われています。

エアコンの使用期間が長くなるほど、経年劣化による損傷でガス管や接続部分から冷媒ガスが漏れる可能性があります。

配管の素材は銅管が多く使われており、使い続けることで摩耗や気温差によるダメージが蓄積し、亀裂を生じる場合もあります。

振動の影響を受けやすいアパートの簡易ベランダや地面に直接設置している場合も、振動や外気候の影響で経年劣化が進みやすいので注意が必要です。

エアコンにガス補充が必要かどうか確認する方法

冷媒ガスは普通に見ただけでは減りが分からないため、次の3つの方法で確認します。

室外機の配管に霜が付いているかチェック

誰でも簡単にチェックできる方法として、室外機の配管に「霜の付着」を確認する方法があります。

冷房を15分程度使用した後に、室外機側の配管に霜がついていないか目視で確認するだけです。

もちろん、ただの水滴と見分けが難しいため、運転前後での変化を見る必要があります。

ただし、配管からの漏れがある場合の冷媒ガス不足しか分からないため、注意が必要です。

検知液でチェック

2つ目の方法は、専用の検知液を使ってガス漏れを確認する方法です。

検知液とは、数千円でホームセンターや通販で販売されている検知用の液製品のことです。
吹きかけて使うことで、冷媒ガスが漏れている場合には泡となって確認できます。

この2つ目の方法も霜の確認と同様に、配管からの漏れの場合にしか分かりません。
しかし、水滴との混同などはなく、漏れている場合は確実に検知できます。

続いて検知液の使用方法を解説します。

①ガス漏れ検知液を吹きかける

まず、検知液を冷媒ガスが漏れていそうな配管部分に吹きかけます。
例えば、缶タイプのものであれば数回振って、スプレーするといった手順です。
検知液自体は不燃性の成分が使われており、たとえ冷媒ガスが漏れていたとしても燃えないようになっています。そのため、安心して吹きかけることができます。

②泡が発生していないか確認する

スプレー缶などでスプレーして、配管に付けた終わった後は、その反応を確認します。
具体的には、検知液が冷媒ガスと反応して、泡が発生していないかを見ます。

泡が発生すれば、冷媒ガスが漏れている可能性が高まり、できるだけ早く専門業者を呼んで修理を依頼する必要があります。

検知器を使用する

検知器は、冷媒ガスを判定できる小型の機器です。
ランプなどで漏れを知らせて、電池さえあれば何度でも検知を繰り返すことができます。

検知液のように後処理は必要なく、消耗品でもないため、常備するという点では検知液よりも優秀です。
使うときは、ランプやブザーなどで漏れを知らせてくれるため、泡を確認するなどの手間がかかりません。

ただし、検知器は上記2つの方法よりも高額な本体購入の費用がかかるため、入手の際に負担が大きいというデメリットがあります。
また、機器によって感度が異なり、従来の冷媒対応や新冷媒対応などにも気をつける必要があるでしょう。

エアコンガスの補充方法

冷媒ガスの補充は、エアコン設置と同様に専門業者へ依頼する必要があります。
作業には専門の知識と道具が必要になるため、自転車のタイヤの空気を入れる感覚で補充できません。

ガス補充する際に必要なもの

ガスを補充する際に必要なものとして以下の4つが挙げられます。

フルオロカーボンガス:冷媒ガス
チャージングスケール:ガスの補填量を測定するもの
ゲージマニホールド:圧力計、連成計、台座などのセット
チャージングホース:冷媒ガスを補填するためのホース

仮に購入する場合は4万円前後かかる場合もあるため、専門業者への依頼費用よりも割高になるでしょう。
それでも費用を抑えたい場合は、レンタルで4,000円前後から道具を用意することも可能です。

自分で補充する手順

冷媒ガスは安全を考慮して、次の手順で実施します。

器具と室外機をつなげる
真空引き
気密試験
ガス補充
バルブを閉める

冷媒ガスは上記の手順を見ると分かるように、一度中の冷媒ガスを抜いて新たに冷媒ガスを入れる作業をします。以下に各手順を解説します。

1. 器具と室外機をつなげる

最初に、配管・室外機内部に残る冷媒ガスを取り出すために「チャージングホース」を使って真空ポンプと室外機を接続します。
このときの注意点は、室外機の「低圧側」にバルブをつなぐようにすることです。

2. 真空引き

真空引きとは、冷媒ガスや不純物を取り除く工程のことです。バルブを開いたら稼働させて、15分ほど動作を続けます。
マニホールドのゲージ圧をチェックしながら、-0.1MPaかそれ以下の時点で低圧側のバルブを閉めます。

これで真空引きの作業が完了です。

3. 気密試験

真空引きの直後にポンプ電源をオフにして、マニホールドのゲージ圧変化をチェックします。
機密に問題ないか、圧の変化をしばらく観察します。問題なければOKです。

もし、ガス漏れが起きている場合は、その部分の修理が必要になります。

4. ガス補充

エアコン機種によって冷媒ガスの量は決まっているため、分量を守った補充を行います。
基本的には、チャージングスケールを使用しつつ、分量に気をつけながら補充作業を開始します。

冷媒ガスボンベをチャージスケールの上部に置いて、重量を0にします。
これを低圧側のバルブと接続し、冷媒ガスの充填が完了します。

5.バルブを閉める

冷媒ガスの補充が確認できたら、バルブを閉めて作業を終了します。

電源を入れてエアコンが実際に直ったかチェックします。
15分ほど回して冷たい空気が出るか確認しましょう。

注意点

冷媒ガスの補充は、ガスの種類を確認し、その性質を見極めた上で安全を十分に確保しながら行う必要があります。

例えば、ガスの種類には単一冷媒の「R22」や「R32」、二種混合冷媒の「R410A」などがあり、
自宅のエアコン機種が使用するのに適した冷媒ガスを選択する必要があります。

しかし、「R22」は既に販売されていないため、「R22」が適している古いエアコンはガス補充できない場合が多いです。
そのうえで、間違ったガスを使用すると爆発・火災などのリスクがあります。

さまざまな危険性を考慮した作業となるため、ガス補充はプロに依頼するのが安心です。

業者にガス補充を依頼した場合の相場は?

ここでは、補充を自分で行わずに、業者に依頼する場合の相場を紹介します。

一般的なエアコン修理業者にガス補充を依頼した場合、1.5万~2万円くらいが相場です。
ただし、業者の料金体系や地域によっては金額が大きく前後することもあります。

また、上記はガス補充だけの相場ですが、実際にはガス漏れの修理などが入ると費用は高くなります。
ガス補充ではなく修理が必要になる場合も踏まえた検討が必要です。

まとめ

今回は、エアコンの冷媒ガスの補充について解説しました。

冷媒ガスの補充が必要になる原因は、設置の不備や配管の故障、経年劣化などです。
そこで、ガス漏れを自主的に調べるか、修理業者にガスの補充と修理を依頼することです。

ただし、自分で補充を行う場合は、道具を使用して安全面にも配慮する必要があるため、通常はガス補充をプロに任せるのがおすすめです。

弊社のエアコンクリーニングの様子はこちらの記事後半にて紹介しております。
気になる方はぜひ参考にしてみてください。

自分でどこまで出来る?エアコン掃除の方法と自分で出来る範囲を徹底解説!...

エアコン掃除を自分でしたいと考えている人も多いのではないでしょうか。 エアコン内部の汚れは運転効率の低下や電気代の上昇につながります。 ここではそんなエ...