浄化槽は、家庭や事業所から排出される生活排水を浄化する設備として広く利用されています。
しかし、浄化槽の設置や維持にはどのくらいの費用がかかるのか、具体的な情報がなかなか得られないことがあります。
本記事では、浄化槽の導入や清掃をプロに依頼する際の費用や清掃内容について詳しく解説します。
浄化槽とは?
浄化槽は、微生物の働きなどを利用し、日常生活で出た汚水を浄化するための設備です。
浄化槽には、主に「合併処理浄化槽」と「単独処理浄化槽」の2種類があります。
合併浄化槽は、家庭や事業所からのすべての排水(トイレ、台所、浴室など)を処理するもので、単独浄化槽はトイレの排水のみを処理するタイプです。
合併浄化槽は単独浄化槽に比べ、放流される汚れが8分の1で済みます。
そこで、現在では環境保護の観点から、合併浄化槽が主流となっています。
実際に、平成13年4月1日から法律上で合併浄化槽のみが「浄化槽」として位置づけられています。
浄化槽の設置費用
浄化槽の設置費用は、浄化槽の種類や容量、設置場所の地形などによって異なります。
設置工事費用
5人槽の合併浄化槽の場合、設置工事費用は80万円~120万円程度が相場です。
必要な処理能力に応じて価格が変動します。
地盤改良が必要な場合や地下水の処理が必要な場合は、追加費用が発生することがあります。
また、配管の長さや工事の難易度によっても費用が異なります。
浄化槽の設置補助金
浄化槽の設置には、自治体からの補助金が提供される場合があります。
これにより、費用負担を軽減し、環境保護を促進できます。
一般的な補助金の内容
多くの自治体では、合併処理浄化槽の設置を推進するために補助金を提供しています。
補助金の額は、浄化槽の規模や設置条件により異なります。
あきる野市の浄化槽設置補助金
以下に実際の例としてあきる野市の補助金の額を紹介します。
補助金額(限度額)
人槽 | 補助金額 |
5人槽 | 360,000円 |
6~7人槽 | 462,000円 |
8~10人槽 | 585,000円 |
11~20人槽 | 1,092,000円 |
21~30人槽 | 1,860,000円 |
31~50人槽 | 2,496,000円 |
既存単独処理浄化槽撤去費補助金 | 120,000円 |
既存くみ取り槽撤去費補助金 | 90,000円 |
宅内配管工事費 | 300,000円 |
浄化槽が汚れる原因
浄化槽が汚れる主な原因は、生活排水に含まれる有機物や無機物の蓄積です。
特に以下の要素が汚れの原因です。
油脂分
キッチンから流れる油脂分は、意外なことにトイレの排水よりも厄介です。
キッチンから流れる油分は、浄化槽内で分解されにくく、汚泥として蓄積します。
このため、油を多く含む排水は、浄化槽の機能を低下させる原因となります。
浄化槽内に油膜が形成されると、酸素の供給が妨げられ、微生物の活動が低下してしまいます。
また、油分が分解されずに蓄積すると、浄化槽の容量が減少し、処理能力が低下します。
洗剤や化学物質
過剰な洗剤や化学物質の使用は、浄化槽内の微生物の活動を抑制し、浄化能力を低下させます。
これにより、以下のような問題が生じます。
微生物の死滅
強力な洗剤や漂白剤は、浄化槽内の微生物を死滅させ、汚水の分解が進まなくなります。
化学的な影響
化学物質の蓄積により、浄化槽の環境が変化し、微生物のバランスが崩れます。
固形物
髪の毛や食品のかすなどの固形物は、浄化槽内で分解されずにたまりやすいため、定期的な清掃が必要です。
以下のような問題が発生します。
詰まりの原因
固形物が浄化槽内で蓄積すると、流路が詰まり、排水が滞ることがあります。
分解の遅延
固形物が多いと、浄化槽内の微生物がそれらを分解するのに時間がかかり、浄化速度が遅れます。
浄化槽のメンテナンス
浄化槽の適切な運用には、定期的なメンテナンスが欠かせません。
浄化槽が正常に機能し続けるためには、汚泥の除去や機器の点検・交換などが必要です。
ここでは、具体的なメンテナンス内容とその費用について詳しく解説します。
汚泥の除去
浄化槽内に蓄積される汚泥は、定期的に除去する必要があります。
汚泥がたまりすぎると浄化機能が低下し、悪臭の発生や環境への影響が懸念されます。
清掃業者は専用のポンプや車両を使って、槽内の汚泥をすべて取り除きます。
これには通常、槽内の水を抜き取り、底にたまった固形物や油脂分を徹底的に除去する工程が含まれます。
汚泥の除去費用は1回あたり2万円~5万円程度ですが、槽のサイズや汚れの程度によっても変動します。
また、汚泥の量が多い場合は追加料金が発生することもあります。
ブロアやポンプの点検・交換
浄化槽の運転には、空気を送り込んで微生物の活動を促すブロアや、処理水を排出するポンプが不可欠です。
これらの機器が正常に動作しているかどうかを定期的に点検することが重要です。
特に、ブロアは微生物の酸素供給に関わるため、故障すると浄化能力が大幅に低下します。
点検では、機器の作動音や振動、温度などをチェックし、異常がないかを確認します。
故障や劣化が見られた場合は速やかに交換します。ブロアやポンプの交換費用は、機種や容量により異なりますが、一般的には数万円程度です。
配管の点検・修理
浄化槽から処理水を排出するための配管は、詰まりや劣化が起こりやすい部分です。
配管の詰まりは、排水の逆流や浄化槽の機能不全を引き起こすため、定期的な点検が必要です。
点検では、配管内をカメラで確認したり、圧力をかけて詰まりの有無を検査します。
問題が発見された場合は、配管の清掃や部分的な修理を行います。
配管修理の費用は、修理内容により数千円から数万円と幅広く、劣化が進んでいる場合は配管全体の交換が必要になることもあります。
法定検査
浄化槽の正常な機能を維持するため、定期的に法定検査が行われます。
各自治体が定める規則に基づき、設置後3ヶ月以内に行われる新設検査、その後は年1回の定期検査が義務付けられています。
この検査では、浄化槽の状態や性能、汚泥の量などが確認され、不具合があれば適切な対処が求められます。
法定検査を適切に行うことで、浄化槽のトラブルを未然に防ぎ、環境保護にも貢献することができます。
浄化槽の清掃をプロへ依頼した場合の料金相場
浄化槽の設置や清掃、メンテナンスをプロに依頼する場合の料金相場は以下のとおりです。
設置費用
合併浄化槽の設置費用は全体で80万円~120万円程度が一般的です。
本体価格、設置工事費、配管工事費が含まれます。
定期点検・保守
点検費用は年に1回~2回、1回あたり1万円~3万円、清掃費用は1回あたり2万円~5万円です。
メンテナンスにかかる費用
ブロアやポンプの交換費用は数万円程度、配管修理費用は修理内容によって異なりますが、数千円~数万円が相場です。
まとめ
浄化槽清掃の費用を把握することで、浄化槽の適切な管理と維持が可能となり、長期的なコスト削減につながります。
浄化槽のメンテナンスをプロに依頼する際の費用や内容について理解を深め、適切な予算管理ができるようにしましょう。